戦国時代の傾奇者 前田慶次
一夢庵風流記という小説が原作のこの漫画
最近、前田慶次という戦国武将の名前を良く聞くようになった。
少年ジャンプの連載時よりもその名を馳せているような気がする。
花の慶次こと、前田慶次郎利益は、実在した戦国武将であり、創作された人物ではない。
漫画の題材になっているエピソードの多くも史実を基に作られた話が中心となっている。
だいふべんもの、幸若の舞、秀吉との謁見、前田利家を水風呂に入れる話、直江兼次を救った話など。
この漫画を一言で言うと『漢(おとこ)』の話。
慶次は常に自由で、常住坐臥、死と隣り合わせに生きる漢。
死と隣り合わせといっても、常に命を狙われている、と言うわけではなく(なくでもないんだが)、死を恐れて臆する事がない、死んだら死ぬだけだと、割り切っている戦国武将。
この死生観の源は、原作者の隆慶一郎氏の小説において、全ての作品の根源にある。
一夢庵風流記然り、死ぬことと見つけたり然り、影武者徳川家康然り。
自由とは、野垂れ死にすることと隣あわせにあること。
だからまずは強くなることだ、と骨は言った。
慶次は強いのである。
虎は何故強いと思う。もともと強いからよ。
慶次は強いのである。
腕力や膂力だけではなく、地位や権力、名誉や金、酒と女、心と体、そういった人間の弱さになりうるもの、全てにおいて強い。
自分が死をおそれないので、他人にも平然と死ねと言う。
原作の小説と一部異なるのだが、石田三成から豊臣秀吉が命じる朝鮮出兵を止めてくれと言われるシーンが非常に好きだ。
ちょいと長いがセリフを引用してみよう。
治部、貴様のやることはいちいち手が込みすぎておる。
石田三成とも言われるものが首ひとつ失うのがそれほど恐いか。
命が惜しいのか!!
そんなにこのいくさを止めたければ命懸けで太閤に掛け合えばいいではないか!
わざわざ俺を使ってまわりくどいことをするな!
自分でまいた種は自分で刈りとれ!
死してこのいくさを止めてみろ!!
う… う─── う─── うるさい!!
うるさい!!うるさい!!
馬鹿!!阿呆!うすらとんかち!鬼畜!天魔!増上慢!
き 貴様に… 貴様に何が判る!
天下百年の計のかけらも判るまい!!
だいたい貴様は今まで何をした!?
この無益で無謀で残忍な“いくさ”を避けるために一体何をしたというのだ!?
古今未曾有の“いくさ”が迫るのも知らず、知っても止めようともせず太平楽にだらだらと生きてきた貴様たちにわしらを裁くどんな資格がある!
言ってみろ
どんな資格があるんだ!?
言ってみろ どんな資格があるんだぁ────!!
言ってみろ!あ────っ!?あ────っ
おーっ どうだぁ!?
洟はふいた方がいいな。
原作では、このあと朝鮮に慶次が行くのだが、少年ジャンプ上で朝鮮出兵はまずかったらしく、朝鮮へ行く話しはなくなってしまっている。
そこが残念ではあるが、大人の事情なので仕方がないところ。
漢らしさが存分に詰まった原作に、希代の名絵師、原哲夫氏の作画が非常にマッチしているこの一作。
歴史好きでない方にもお勧めです。





