WEBマーケティング事例集 マーケティングの面白さは想定外の結果にある
+200円出したら定価6400円の商品が買える、と言われたらみなさんはどうしますか?
私は200円だして6400円の商品がもらえるなら迷わず購入します。
そんなセットを作ってみたら驚きの結果が待っていた、という話をしたいと思います。
マーケティングの実験用の企画を考える
セール用の商品の企画を考えていました。
私はWEBに関しては社内で一番(自負)の人間で、上司からも厚い信頼を得ている(自負)優秀な人間(うぬぼれ)なんですね。
自分でいろいろ考えて、キャンペーンを企画してそれを押し通すくらいの力を持っていまして、この立場を利用していろいろと実験的なことをやっています。
もちろん、会社という組織の一員なので、私の一存で勝手に進められるわけではなく、ちゃんと企画書を作って承認を得てからやっています。
なにかあったときにちゃんと上司に許可を得てますよ、という免罪符を手にするために。
前回のハガキを使ったキャンペーンもそうなんですが、思いついたら企画して、実行して、検証するという流れが大好きで、ある程度のことは許容してくる上司にいつも感謝をしています。
で、なかなか動きの悪い商品がありまして、それを人気商品にくっつけて売ったら在庫もはけていいんじゃないかと考えました。
前回のハガキキャンペーンとはこちらのことです
Aセット:29,800円 VS Bセット30,000円
いくつかの商品をまとめて安く買えるまとめセットを作り、その売価を29,800円にして、+200円だしたら、先に述べた定価6,400円の動きの悪い商品もついてくるというセットを作りました。
Aセット:29,800円 VS Bセット30,000円 という2つのラインナップです。
私の考えでは100% Bセットが売れると踏んでいたんですが、マーケッターのサガとして、テストしたいじゃないですか。
やるまでもないけど、正しさを証明するには検証しなくちゃいけないじゃないですか。
200円の価値ってこんなもんだよ
200円っていったら都内じゃ車を30分停車するだけでも、もっとかかりますよ。
スシローの色のついた皿1皿分。つぶ貝だったら2皿分。
タバコ1箱よりも安く、ハーゲンダッツよりも安い。
いい大人だったらたかが200円くらいですよね。
200円を友達に貸して、返ってこなくても泣き寝入りしないといけない金額ですよ。
貸してあげたのに、200円を催促することで、ちっちゃい人間でケチな野郎だとののしられるほど不条理な金額ですよ。
さらに加えて言うと、6400円が200円って割引率で言ったら96%OFFですよ。
96%OFFとか景表法にひっかかるんじゃないか、原価割れにもほどがあるぜ、まったく。というレベルの割引率ですわ。(今回はセット販売の一部なので景表法はクリアしてます)
こんな無茶な企画を通す上司もどうかしてますよね、ほんとありがたい。
実際にキャンペーンを実施して、結果をみたら…
キャンペーンは驚きの結果に!
24%くらいの人が、Aセット(オマケなしセット)を購入している!!!
嘘だろ、+200円で6,400円(定価)の商品が買えるのに、なんでだ!と本当に衝撃を受けました。
購入者の母数がそこまで多かったわけではないのですが、24%っていったら4人に1人ですよ。
統計学的な誤差の範囲を余裕で超えているわけですね。
これは驚きと共に、新しい発見をした瞬間でした。
欲しくもない商品はどんなにオトクであっても、人の財布は開かないと。
価格合理性よりも、不要な商品はいらないというミニマリストかと。
これは買わなかった消費者の方を誉めたいと思います。
大多数はお得なBセットを購入しているけども
もちろん、76%の人はBセット(+200円のセット)を購入しているので、大多数の人は+200円の魔力にあらがえなかったか、純粋にその商品を欲しかった人ですね。
この購入者層を分析したところ、+200円を買わなかった年齢層は10代後半~29歳までのユーザーが大半を占めていました。
その+200円の商品は、年齢層が高めの方を対象とした商品だったので、この年齢分布は納得でした。
ターゲット層から外れた消費者は、それを選ばないと。
少し補足をすると、10代の方は100% Aセットを選択。但し母数がかなり少ない。
20歳~24歳の方は57%がAセット、25歳~29歳は33%がAセットを選択と、年齢層が上がるほど選択率は下がっていくというおもしろい結果でした。
30歳以上の方々はほぼ100% Bセット(+200円のセット)を購入していました。
+200円で買える商品のターゲット層に近いほど選択率はあがっていく、という結果です。
このマーケティング結果の学び
正直ですね、+200円の威力を過信しすぎて、その+200円の商品説明をあまりちゃんとしてなかったという点が1つ。
もう少し商品説明をきちんとしていれば、100%に持っていけたかもしれません。
商品の価値とユーザーニーズの乖離は価格だけでは埋まらない
商品説明は足りなかったかもしれないけれど、ターゲットのニーズから離れた、ほんとうに欲しくない商品はどんなに安くても購入されない、という事実。
これを知れたのは正直かなりの収穫でした。
プライシング(値付け)の暴力でどんな商品でも、売れるだろうという過信がありました。安くすれば売れるだろうという過信。
お客様はニーズ(自分に必要かどうか)とマッチしてなければ(必要なければ)、例え200円でも安いほうを買う。
自分の思い通りに消費者は動かないという現実
自分のなかで当たり前のことであっても、結果がそうなるとは限らない、という現実。
自分の仮説が常に正しいという、わけのわからない自信を捨てるいいきっかけになりました。
常に仮説と検証が大事であると。
マーケッターの基本ですね。
最後の問題です
さて、+200円で6,400円の商品が購入できます。買うのと買わないのどちらがオトクでしょうか?
私は欲しくなくても+200円だしてBセットを買ってしまうと思います。
200円を損するより、+200円で6400円の商品が買えるのに、買わなかった、という心理的損失の方が大きいと感じてしまうから。
正解はあなた次第です。