WEBマーケティング 1円で物を売ってみる
1円商品を販売したら、売れそうじゃないですか?1円。
1円を作るのに1円以上のコストがかかると言われている1円玉1枚で買い物ができるという、現在の日本でできる最低金額の値付けです。
EC上で実際に1円で商品を販売したらどうなったかを振り返ります。
おもしろそうだからやってみたい、というのが一番の理由でした。
販売した商品は、あるサプリメントのサンプルです。
これも動きの悪かった商品です。
1円で販売企画を立てると反対される
ある意味当然なんですが、まぁ、会社としては、まずは反対します。だって絶対赤字になるから。
そんなことは百も承知で企画を立てているので、反対されたといっても、そう簡単には引っ込めません。
こういう時どうするかというと、私の場合は反対される理由を逆手にとって、反論します。
理詰めで来るタイプの人はある意味戦いやすい。
なぜなら反対する理由をきちんと納得させられれば、結構わかってもらえるので。

逆に感情で反論されるときついですね。理由もなくダメだと言われたら説得のしようがないので。
その時に言われた反対理由を思い出して書いてみます。
売れば売るほど赤字になる
これはやる前からわかっていたので、簡単に説得できます。
WEB上の通販で物を売るには、広告が必要なんですね。知らない人には買ってもらえないから。
1円で販売する理由として、広告費を使わずにサイト内でバナーを置いて、どの程度売れるかが知りたかったので、新規獲得にかかる広告費に比べれば安いもんでしょ。
だいたい、サンプルなんてそれ単体で黒字なんて初めから無理だから、これは軽いジャブ程度の理由です。
オレにとってこの状態は、昼下がりのコーヒーブレイクと何ら変わらない平穏なものだ。
1円だったらタダで配ったほうがいいんじゃない
1円とるくらいなら0円の方がいいんじゃないかと言われました。気持ちはわかります。売り手としては1円の売り上げがあがったところで、全然インパクトないですからね。
0円ではやりたくなかったんです。無料にはしたくなかった。
0円と1円では、意味合いが全然変わると思ってました。個人的に。

0円だと支払いがないので、0円の価値しかない
0円てタダじゃないですか。カートシステムに0円決済の方法がなかった、という点が一番の問題だったんですが、カートを通さずにフォームなどから配送先を取得して送る方法で解決はできます。
ただ、1円であってもお金を支払って購入する意思のあるお客さんを集めたかったんです。
道で配ってるティッシュは0円だから受け取るけど、1円で売ります、だと全然目的が変わるじゃないですか。
0円で集まるリストに対する期待値ってすごく低いんですよね。
いわゆるサンプルゲッターが集まってしまうと。
なので、お金を1円でもいいから払って欲しがるお客様に売りたかったので、ここは1円でやりたいと押し通しました。
1円の未払いが発生すると余計なコストが発生する
これが最大の問題点でした。1円であっても未払いが起きてしまうと、未払いのお客様に督促をしなければならず、それにかかるコストが嫌だと。
1円の回収のために、電話なり、メールなり、書類を送付する余計なコストが発生してしまうと。
これを解決するために、購入する時点では1円決済で通して、実際は支払いは不要です、という処理で対応しました。
使っていたカートシステムが商品によって支払い方法が変更できるシステムであったこと。
支払い方法の中にある「後払い」が、自社対応の支払い方法だったので、支払い方法を後払いのみに指定。
商品同送の請求書は0円で送って、支払い不要ですよ~と後から告知。
そのために、1円の受注情報を0円に書き換えるプログラム作りましたよ。CSV変換コンバーターを自分で。
いや、ちょっと前に0円の価値しかないと言ってたじゃないか、と言われそうですが、購入する際にお金を支払う意思があるお客様に対しての処置なので、個人的にはこれはOKです。
こんな感じでいろいろと反対があったわけですが、なんとか実施にこぎつけました。
ほんと、なんだかんだやらせてくれる会社と上司に感謝ですよ。
1円サンプルの販売目的!
1. 1円だったら30%くらい「ついで買い」が発生するのではないか?
2. 1円だったらどれくらい売れるのかを知りたい
3. この商品のページが全然見られないのでPV&認知をあげたい
4. おもしろそうだからやってみたい
1円で販売したらどのくらいついで買いが発生するか
1円でサンプルを販売したら、もともと別の商品を購入しようとしていたお客さんが、「1円ならいいか」とこれも買ってくれるんじゃないかと考えました。
なんやかんやで、商品購入者の30%くらいは動くんじゃないかと。
結果は4%。
1円サンプル販売期間中の受注件数のうち、この1円サンプルを買ってくれた人は4%でした。
甘くないね。
敗因を分析する
前回の+200円で6400円の商品がついてくるの実験と同様に、欲しくないものは1円でも買わないという人が多かったんでしょうね。サプリだし。
カート近辺にバナーを設置して、LPからのユーザーの目に留まるようにもしていたんですが、導線が弱かったのもあると思います。
1円サンプル購入者のうち、別商品も買った人 54%
期間中の全体の受注件数に対してのサンプル購入者は4%でしたが、切り口を変えて、1円サンプル購入者の複数商品購入率をみると54%でした。

46%の方は1円サンプルのみの購入。
54%の方は1円サンプル+αの購入だったと。
どっちがきっかけかははっきりとはわかりませんが、1円サンプル施策をやらなければ、この動きがなかったのは間違いないと思います。
だって、今まで売れてなかった商品なので。
商品ページのPV数は20倍になりました
「%」とか「倍」という言葉に騙されてはいけません。これらは母数があっての話なので。
広告代理店さんなどは、この数値の印象操作がお上手です。
私のこの記事は何かを売ろうとしているわけではないので、種を明かしますが、もともとの母数がかなり低いので、実績値でいうと大した数値ではありません。

とはいえ、興味関心がほとんどなかった商品に対して、一定の興味を抱いてもらえたことは事実。
1円サンプルセール終了後も、やる前と比べて商品ページのPV数は上昇しました。少しだけね。
サンプルからの本品引き上げ率
どれくらい売れたかの実数は一応、差し控えますが、まぁまぁ売れました。
サンプルの販売目的は本品への引き上げとなりますので、その数値を公表したいと思います。
引き上げ率2.5%
繰り返す2.5%。100人購入者がいたら2.5人。悪い。
いやーなんとなくわかってましたがなかなか厳しい数字でした。
サンプル施策実施後、2週間の時点の数字なので、もう少し伸びたような記憶もあるのですが、以後の引き上げ率を私の方でちゃんと計測してないので不明です。
これ、新規獲得コストがかかってないので、まだいいんですが、仮にこれを広告費をかけてやったとすると。
CPA(コストパーアクション:サンプル購入者獲得にかかったコスト)が仮に3,000円だとして(今時サプリのサンプルだと3000円でも厳しいと思いますが)、それの引き上げ率が2.5%なので、CPAの40倍(100÷2.5)がCPO(コストパーオーダー:本品購入者獲得コスト)になります。
なのでCPAが3,000円だと、それの40倍で120,000円がCPOという計算になります。

このサプリメントのLTV(生涯顧客価値:この商品の総売上見込み)が12万円以上あれば、PAYラインに乗ります。
あるわけない、LTV12万円など。このサプリに!
1円で販売することの是非を問う
結果だけ見ると、さほど良い結果とは言えませんでした。
とりあえず、サンプルを使ってみてほしい、という時には有効な施策ですが、その後の引き上げ率は、その商品の満足度や効果実感に左右されると思います。
サプリメントは継続して使わないと効果の実感が薄いので、こういったサンプル施策にはあまり向いてないかもしれません。
1ヵ月分の本商品を安く売る方が結果としては良かったかも。
サンプルを買ってほしい!という目的であればやってみてもいいかもしれません。費用対効果はやってみないとわからないけど引上げまで考えると多分合わない。
1円で販売するマーケティングテストができたのは良かった
私個人の感想からすると、マーケティングのテストができた時点で大成功なので、学びの多い結果でした。
売れたかどうかや費用対効果じゃなくて、この経験ができたことが大きいわけですね。
思いつくだけならだれでも思いつくけど、実際にやってみると想像以上の学びがあるということが、マーケティングの楽しさにあります。
似たようなマーケティング事例の成功例
商品価格をギュっと下げて、別のところで売り上げをあげる、というのビジネスモデルは、Amazonなどの電子書籍のマンガ本セールが有名ですよね。
「ブラックジャックによろしく」の2次利用フリー化による、続巻の売り上げが上がったなどが有名です。
コンテンツ系、漫画だと次の商品購入のハードル(単価)が低いので、ファンを作れれば、その次の作品につながりやすいのが良くわかります。
お悩み解決商品でそれはきっと難しい
サプリメントの1円販売だと、ファンを作るというより、抱えている悩みを解決できるかどうか、の方が重要です。
※サプリでもファンが作れるのがもちろんベスト
安く売るよりもむしろ、高くても買ってくれるユーザーに響くマーケティングを模索する方がいいでしょうね。
使った瞬間に効果を実感できる、または、体感できる、そういった商品を、幅広いお客様に使ってもらって、「これはいい」と言ってもらえる商品だったら、1円サンプルなどが有効じゃないかと思います。
そんな商品があれば。
1円でサプリメントのサンプル販売した結果、まとめ
費用対効果を求めるならやらない方がいい。
PV、認知、リスト集めならありだけど、その後の引き上げは難しい。
商品に魅力を感じて購入したユーザーではなく、価格に魅力を感じて購入したユーザーなので、その後の引き上げにつながりづらい。
やってみて面白かったので、個人的には満足