WOOD JOB
林業に就職しようと思ったことはありますか?私はありません。というか林業の具体的な職務内容がまずわかっていません。なんとなく杉やヒノキを切って売る、というイメージがあります、映画の話が現実とそう離れていないのであれば、その想像は基本的に間違っていないようです。
この映画、主人公の立ち振る舞いがなんだか気に入らない。ちゃらけた若者が適当に決めた林業への就職とその周りを彩る人たちの物語です。1年間の職業訓練を経て立派に成長する物語。
都会暮らしの青年がど田舎に引っ越して、林業。ケータイはつながらない、田舎の村意識の強い村民と隔たりを感じながら、村のきれいな女性に惚れる。頼りなかった青年が1年を迎えるころには立派に成長して別れを惜しみながら、都会に帰っていく。で、また戻ってくる。村に。よくある話。映画の中では。
コミカルに話を進めていくんですが、なんといいますか、主人公の立ち振る舞いがなんだか気に入らないですよ。(2回目)
多分、こういうタイプの人間があんまり好きじゃないせい。内向的な人間が経験を積んでたくましくなっていく話は大好物なんですけどね、なんかチャラいのがなぁ。
林業に就職しようとしたきっかけが大学受験の失敗。林業に決めたのが、噛んでいたガムを口から吐いてガムが付いた広告の二枚目が林業でそのチラシに乗っていた女の子(長澤まさみ)が可愛いから。このシーンが嫌で、こういうやつ嫌いだなぁと思ってしまいました。
人と人との信頼関係が生まれる瞬間
田舎、林業、転職、人、自分にないもの、新しく手に入れるもの、都会、経験、出会い、別れ、電波の届かないエリア、単線の電車、神事、祭、山、神、神隠し、村長、礼儀、教育、理解。
田舎の人が排他的なのは、その人のことをあまり知らずどことなく敵視するからであって、別に見下していたりさげすんでいるわけではなく、ただただ警戒心が強いから。その警戒心が解ける時に仲間として認めて、本当の家族のように接してくれる。
人って知らない人のことを、敵視するじゃないですか。私だけでしょうか。そういう感情の裏には自分たちが作ってきたコミュニティによくわからない人を入れたくない、今までの既存の関係を壊したくないという心理がある。
排他的ということではなく、むしろツーカーの中でいられるコミュニティを大事にしたい、という思いが強いんだとおもうんです。だから、そういうコミュニティに入っていくには信頼関係を作り上げるしかないわけで、その信頼を試すがごとくきつく当たったり、思いやりのない言動がでてくる。
そんな期待に応えるとまではいかずとも、がんばりや努力が垣間見えると仲間に入れてもらえるんでしょうね。
映画の中で学校の友人達が林業の様子を体験したいと遊びに来るシーンがあり、都会っ子たちはどこか田舎暮らしの人たちをさげすみに似た見下したような空気で接する。実際の言動は、こういう人たちがいるから俺たちが暮らしていける、とありがたがっているように聞こえるも、言葉の上だけで実際伝わっているのが真逆の感情になっている。それを本人は自覚しておらず、良かれと思って言った言葉が、実は切れ味の悪いナイフの如く、そこにいる人たちを傷つけているわけです。
気の短いアニキ的存在の伊藤英明が切れそうになるも、今までそっち側だった主人公が怒りをあらわにし、もう帰れと怒鳴る。
なにか強い感情を共感できたときに、人は仲間になったと言えるのかもしれません。
こういう共感って共感するための場を作られて、同じを思いを共有する、というのとはちょっと特性が違うと思うんですよ。感動するために頑張ろうとか、人を感動させようという目的でその行為を行うことに対して、なんとなく冷めた感情を抱いてしまう自分がいます。
そうじゃなくて、映画の主人公のように何かを強制されたわけじゃなく、自分が正しいと思った行動の先にある結果が感動であり、共感なんだろうなと思いました。チャラさが目についた主人公もこのころになるとだいぶいい感じに仕上がってきます。
大木を切り倒すシーンは必見
WOOD JOBの見どころとして大木を切り倒すシーンがあります。樹齢100年以上と言われる杉の木の伐採シーンと、神事に使う御神木を切り倒すシーン。CGじゃないと思うんですけど、巨木を切る。言葉にするとこれだけのことを映像にするとなると、どれだけのお金がかかったのかなぁと下世話な想像を働かせたくなるほどの迫力。CGなのかぁ。音と映像。どちらも迫力があります。
これ、映像で出てきたとき、まさか切らないよなと思ってました。これは樹齢何年なんでしょうね。切り倒された木が倒れる時の「どぉーん」という音と木の上から撮影した木が倒れてくる映像はすごいです。この切った木の使い道があれなんですけど、映画のオチ的な要素もあるのでここでネタバレをするのは控えておきます。
排他的で村意識の強い自分も見終わるころには主人公を一人の男として認めておりました。 どことなく軽い感じは最後まで抜けないんで、もうちょっとピリッとしろよとは言いたくなりますが、なかなか面白かったです。